9.イギリス人自転車野郎
1994年8月31日 ツオ峠手前(4390m)→ツオ峠(4500m)ラツェ(3920m) 晴れ/ホテル泊
9月1日 ラツェ滞在(3920m) 晴れ/ホテル泊
イギリス人自転車野郎
僕らがラツェの町で食堂を探しているときだ。一人のサイクリストがシガツェ方面から走ってきた。
彼はイギリス人で名はアンディー。見つけた食堂で、モォモォとトゥクパを注文し、パクつきながら彼の話を聞く。
モォモォはチベットの餃子といわれている。形こそ餃子の形をしているが、肉しか詰まっておらず、皮も日本の餃子よりぶ厚くしっとりした感じはない。
トゥクパは、チベット風うどんで、僕が食べたのはすいとんの汁のようですごくおいしく、おかわりをしたい程だった。
彼は北京からの4,000kmを約1ヶ月で走り抜けてきたという。それを聞いたとき、僕たちは唖然とした。
彼の旅のスタイルは。「軽い・速い・格好良い」と、三拍子そろっている。ギリギリまで荷物を切りつめ。衣類はレーサージャージの様に機能的なものを使用。下半身もレーサー用のピッチリしたパンツを履いている。自炊用の食品や機材は最小限で、食堂を見つけたら即食事。無い時はどうしていたのか聞き忘れたが、チョコレートやビスケットで賄っていただろうと、想像がつく。
逆に僕らは、自炊のための道具や食品を十分に持ち。一日60km前後走れれば良いと思っている。そのかわりに得ることができる余裕は、チベットの民や自然との触れ合いにとっておきたいのだ。つまり、景色も見ずにいかに速く走り抜けるかなんて、“旅”という視点からみれば、もうとっくに卒業した気でいる。
何も、チベットまで来て、そんなに急がなくても良いのではないかと思うが、もしかしたら彼はチベットの大地、ひいてはアジア・ユーラシア大陸を股に掛けて、いかに速く走り抜けれるかを実践しているとんでもないヤツなのかもしれない。
日頃仲間内で「旅人の数だけ、旅のスタイルがあるよな…。」なんて話しているのだが、彼の登場で改めてそのことを感じさせられた。
こんな彼と、後々張り合うことになろうとは...。
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