16. ようやく、ネパールはカトマンズへ

1994年9月9日 ドラルガート(540m)→カトマンズ(1210m) 曇り/ホテル泊

ようやく、ネパールはカトマンズへ

 前方にトローリーバスの電線が見えてきた。地図にはしっかりとトローリーバスのルートが記されている。これをたどっていけば、目的地に着けるのだ。もう少しだ。もう少しで、カトマンズの中心なのだ。

 ここがネパールきっての大都市、カトマンズだとはっきりと確信できる環状道路の一交差点に到着したのは午後3時過ぎだ。
 サドルから降りてしばらくぼーっと立ちつくしていた。

 約1,000kmを走り終えた安堵感からか、自分で決めたことを最後までやり通した達成感からか、自然と涙が溢れだす。
 この旅は何事にもかえ難いすばらしい思い出として、自分の記憶の中に残るだろうと思えた。

 振り返ると、仲間がもう数百メートル後ろに来ている。一番乗りの僕は、後続の二人に悟られぬよう急いで涙を拭い去った。
 ビン入りコーラをぐいと飲み干し、二人を出迎えた。二人とも疲れの中にも満足そうな笑みがこぼれて見える。僕以外の二人は海外旅行は初めてで、その内一人は、自転車での遠出さえ初めてなのだ。本当によくやったと思う。
 度重なるトラブルや疲労感は、”到着した”というこの事実がすべて吹き飛ばしてくれた。

 カトマンズに数日滞在した後、奥田は大学の授業に間に合うよう、帰国。まだ旅を続けるために残った、僕と畑中は、そろって急性食中毒にかかり数日寝込むことになった。その後畑中は、ネパール第二の町ポカラに向かって走り、僕は次の”アンナプルナ一周”に向けて準備を始めた。

 

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